- 公務員の職場環境は良くなるの?
- 公務員になったけど将来も安心して働き続けられる?
- 給料はどうなるのか?
- 公務員としてのキャリア形成に未来はあるの?
公務員は数ある職業の中でも安定した仕事です。
その一方で、就職してみると休職者が多かったり給料が友人が勤める民間企業に比べて低かったり、さらには退職者が増加傾向にあるなど不安に感じることも多いのではないでしょうか。
私は民間から県庁に転職して10年以上経つ現役職員です。これまでに企画、他の自治体、また人事課の経験があります。
そこでこの記事では、これからの公務員の職場環境がどうなるのかを見通すために、令和5年8月に出された人事院勧告のポイントをまとめて解説します。
公務員の職場環境や働き方、また給料などが今後どの方向に向かうのかについては、人事院勧告の内容をチェックすることで把握することができます。
公務員の働き方や給料
『人事院勧告⇒国家公務員に反映⇒地方公務員が追従』
基本的にこの流れのため、地方公務員の未来は人事院勧告を読み解くことで予想ができる!
特に気になった点は、働く人の幸せ”Well-being”に焦点が当てられている点。
皆さんが膨大な資料を読み込まなくていいように、この記事を読めば内容を掴めるようにまとめました。気になる週休3日の行方は!?
令和5年8月の人事院勧告で大きく変わるポイント
この記事ではこれまでの人事院勧告から大きく変わったところ、より重視されているところについて解説します。
そこでこのパートでは、大きく変わった2つのポイントについて解説します。
- 給与に関する勧告・報告
- 勤務時間に関する勧告
給与について(過去5年の平均と比べて、約10倍のベースアップ)
人材確保が困難になっている公務員は処遇面での改善が不可欠とされています。
特に課題としているのは採用時の給与水準。
今回の勧告においては、ベースアップを過去5年平均で約10倍に引き上げるなどの内容となっており、つまり人材確保が相当ピンチであることが伺えます。
- 月例給
- 初任給を始め若年層に重点を置いて俸給表を引上げ改定
【平均改定率】
1級[係員] 5.2%、2級[主任等] 2.8% 等
【勧告後の本府省大卒初任給】
総合職 249,640円、一般職 242,640円
- ボーナス
- 年間 4.40 月分 → 4.50 月分(+0.1月分)
※ボーナスという言い方は正確ではありませんが、この記事では勧告に習い期末勤勉手当のことを指します。
- 手当新設
- テレワーク中心の働き方をする職員向けに光熱水費の負担軽減として、在宅勤務手当の新設
勤務時間について(フレックスタイム制の拡大)
これがいわゆる『週休3日制』です。
ただし週休3日は誰もが自由に選択できるというものではなく、条件を満たす一部の方だけに適用されます。
フレックスタイム制を活用した「勤務時間を割り振らない日」の対象職員の拡大
フレックスタイム制を活用し、勤務時間の総量を維持しながら、勤務時間を割り振らない日(ゼロ割振り日)を週1日を限度に設定可能にするものです。
現在は育児介護等職員に認められている措置を一般の職員に拡大する
時期については、令和7年4月1日からの実施を予定。
※勤務時間管理システム等の改修が必要になるため
国家公務員向けの人事院勧告が地方公務員にとっても重要な理由
人事院勧告は国家公務員に対するものだと思うけど、地方公務員が参考にしてもいいの?
もちろんです。地方自治体職員の給与や休暇等の制度は国家公務員をもとに自治体ごとに決定します。
そのため地方自治体の働き方・給与の将来的な方向性を考えるには、人事院勧告が参考になります。
【地方公務員が国に準ずる大きな理由】
地方自治体の給与水準が地方交付税(国が地方に渡す財源)の額に影響するからです。
給与水準が高いか低いか、国が判断する際の指標が国家公務員の給与水準。
そのため必然的に自治体の給与は国に準拠することになり、働き方や休暇等の制度も追随することになります。
公務組織を支える多様で有為な人材の確保のための一体的な取組
最近、地方自治体に採用される人は社会人経験者が多いと感じませんか。
長らく人材難を謳ってきた国の省庁の方は、それでも新卒採用を重んじている傾向がありました。
ここまで明確に方針を転換させることで、採用のあり方が大きく変わるかもしれません。
- 新卒一括採用・育成では成り立たない。
- 民間で経験や専門性を有する人材の誘致・確保の推進
では、ポイントとなるところを解説します。
民間と公務の知の融合の推進
実務の中核を担う人材の積極的
公務員の組織は年齢層別の職員数に大きな偏りがあり、中堅職員の少なさが顕著です。
そのためこれまでも経験者採用が進められてきました。
今回の勧告では経験者採用に対してさらに踏み込んだ内容が記載されています。
具体的には組織の要となる係長級の職員に民間経験者を配置するというものです。
受験には年齢制限があるため、経験者採用も若手中堅層がメインでありましたが、明確にマネジメント層を中途採用するというのは大きな変化だと感じます。
官民人事交流の促進のための発信強化
高度の専門性を備えた民間人材の活用を進めるため、任期付職員法がH14年にできました。
端的に説明すると『専門知識を持った人を特定任期付職員として高額な給料で雇える』のがポイントであり、通常業務に従事する任期付職員と違いがあります。
勧告ではこの既存制度を、より積極的に活用しようという内容になっています。
以下の東京都のような例が地方でも加速するのではないでしょうか。
【東京都の例】
募集職種 | ・戦略広報担当課長 ・国際戦略広報担当課長 |
業務内容 | ・デジタルマーケティングを活用した国内・海外都市への情報発信企画 ・国内・海外メディアとのメディアとのメディアリレーションの構築など |
給与の例 (職歴による) | ・月額 533,500円 ・地域手当 106,700円 |
採用試験の実施方法の見直し
他にも、採用試験改革にも言及しています。
受験しやすい試験に向けて、オンライン方式の検討が進むことが予想できます。
処遇の改善
記事の冒頭でも新卒初任給の処遇の改善に触れましたが、他にも次のようなことが勧告にあります。
- 係長級以上の水準引き上げ
- 若手中堅の優秀者の処遇引上げ
- 最優秀者のボーナス引上げ
- 特定任期付職員のボーナス拡充
まぁこれは、アンチ人事評価の私としては非常に冷めた目で見ています。「じゃあ成績上位で優秀な人たちでもっと仕事よろしく!」って、言いたくなる気持ちを抑えています。あ、つい毒を……失礼しました。笑
職員個々の成長を通じた組織パフォーマンス向上施策
人材育成を担当する者としては、とても注目している内容となります。
今は色々なことに正解がない時代でが、その中でも絶対的なことはあります。
それは働く目的です。
働く目的は個人の自己実現を果たすこと
そのために必要なのは、皆さんが自分のキャリアを考えることです。
個々のキャリア形成にあたって一番いいのは『やりたいと思ったことができること』。
その状態に近づくためには、職員が主体的に学び、それを仕事につなげられる仕組みが求められます。
そこが今回の勧告では強調されているポイントであり、特に注目すべきだと感じました。
もちろん『やりたいことがあっても異動希望なんて通らない!』と感じる人がほとんどだと思います。ぜひこちらの記事もご覧ください。
職員のキャリア形成・主体的な学びの促進
人事院勧告においては、以下の取組が記載されています。
- 20~30代の若手中堅職員を対象としたキャリア支援、マネジメント層のキャリア支援力向上
- 職員の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しのための研修の検討
- 職員の学びが仕事にいかされキャリアパスにつながる仕組みの検討
- 兼業の在り方の検討
職員の自律的・主体的な学びという点では、すでにUDEMYなどの講座を受講できる自治体もあります。
私の自治体も某オンライン学習サービスを取り入れてます。質も良く非常にありがたく感じます。これからの主流になるのではないでしょうか。
こちらの記事もどうぞ。
>>【地方公務員のキャリアデザインの描き方】仕事がつまらない、モチベーションが低いと悩む人は必見!
個々の力を組織の力へつなげる取組
人事管理の面でも人事院勧告に記載があります。
人事管理は非常に手間がかかり地道な作業です。
また人事課職員の印象やイメージによって配置や異動が決められる部分もあります。
人事管理にデジタルを活用し、効率的かつ公正に評価や配置につながるのはメリットではないでしょうか。
これからの人事は、より個人の考えや希望を尊重し、組織マネジメントに生かすことが求められます。
他の記事でも言っていますが、これからは主体的にキャリアを考える人とそうでない人によって、自身の希望が叶う・叶わないに大きく差が生じることが考えられます。
どちら側の人になりたいでしょうか。
もちろんこのブログを読んでいただいてるあなたは、自己実現を叶えられるようにしましょう!
多様なワークスタイル・ライフスタイル実現とWell-beingの土台となる環境整備
民間企業においては人的資本経営が常識です。
つまり『従業員が幸せに働くことができる』ことが、企業における経営戦略上でも重要な位置付けとなっています。
片や公務員はと言うと、国の省庁がブラックな職場であることがバレてしまうなど、人材確保が困難な状況にあります。もはや行政運営に支障をきたしかねないレベルにある。
そこで『公務員の労働環境はブラック』というイメージを払拭するため、これまでにない内容が人事院勧告に記載されており、注目すべきポイントです。
人材確保の観点からすると、働く人を大事にする意識については、民間と比べ周回遅れ感が否めません…
多様なワークスタイル・ライフスタイルを可能とする取組
週休3日制度について
週休3日は誤解されがちですが、あくまでフレックスタイム制の活用の一環です。
つまり総労働時間は確保したまま、休みにする日の就業時間を他の日に割り当てるというやり方です。
一概には喜べないものの、多様な事情に配慮しながら働くことができるのは大きな改革です。
職員の選択を後押しする給与制度上の措置
働き方のニーズやライフスタイルに応じて、手当の在り方も変化するよう触れられています。
- 扶養手当
- 共働きを前提に、配偶者手当を減らし子どもに対する手当を増ふす。
- テレワーク手当
- 在宅勤務による働き方の変化に対する手当の変更です。
光熱水費の負担軽減とともに、通勤手当を調整(減?)する。
職員のWell-beingの土台づくりに資する取組
まさか公務員の世界でWell-beingという言葉が出てくるとはおもいませんでした。
それだけ時代が個人の幸福を重要視している、逆に言うと自己実現が果たせていないということだと感じます。
超過勤務の縮減(負のイメージの払拭)
地方自治体はまだマシだと思いますが、一方ですっかりブラックなイメージの省庁において、残業を減らすことはマストな課題です。
と言いながらも、令和5年度、私の自治体から国へ出向した人は相変わらず深夜残業が当たり前な状況みたいです。ツラい……
まぁずーっと言われていますが、国会対応の仕組みが変わらない限りは何も変わらないでしょう。
職員の健康増進
心身の健康に対する重要度は高まっています。
特に若手のメンタル疾患者の増加や、定年引上げによる高齢期職員の増加など、『心身の健康』は組織マネジメントにおいても重要なテーマの1つです。
皆さんにも気を付けてほしいのですが、今や長期病休者の7割以上が心の健康問題が原因になっています。
現在は昔のように『メンタル不調で休んだらその後のキャリアは見込めない』時代ではなく、早めの対処と職場復帰が求められています。
限界まで頑張ってつぶれるのではなく、症状が軽いうちに早めに休んで、早めに治して復帰できることが重要です。
お忙しい中、最後まで読んでいただきありがとうございました。