この記事では地方公務員を目指す方に向けて、どんな人が地方公務員に向いていて、どんな人が向いていないのかを紹介します。
民間からの中途採用者に多い悩みは『仕事内容が思っていたのと違った』
特に最近の中途採用者の中には、頑張って勉強して公務員になったのに「思っているのと違った」という感想を持って悩んでいる人が多いです。
民間からの転職や人事課の経験などを踏まえて、入庁後のミスマッチを防ぐためのコツをお伝えします。
公務員はどんな仕事?必要な能力やスキルは何?
仕事柄、地方公務員に必要とされるスキルは正確さや真面目さだけでなく、複数の立場や意見の調整など、大きな組織におけるコミュニケーション能力やリーダーシップが重要です。
仕事をする上ではスキルに加え、幅広い分野に対する知識も求められます。
なぜなら行政職の公務員は基本的にゼネラリストになることが前提であり、観光から福祉、農業や水産、環境、土木、行財政など……様々な業務を行う可能性があるからです。
自分はゼネラリストではなく、特定の分野に特化したスペシャリストを希望しているのですが……公務員は向いていないのでしょうか?
そんなことはありません!
入庁後のミスマッチを防ぐためには、地方公務員にはどのようなスキルが求められるのかを知った上で、自己分析を行い、自身の強味や弱みとすり合わせることが大切です。
行政も人の多様性を重視する方向にあるため、色んな人にとって採用の間口は確実に広がっています。
地方公務員は地域貢献ができる素晴らしい仕事です。
日々の仕事の中では業務に追われて目的を忘れがちですが、公務員として良い仕事をしている人は目的をきちんと自分の中に落とし込んでいる気がします。
キャリア形成についても、ご自身の意向を踏まえて国の省庁や市町村、また民間企業への出向など色々な経験ができるチャンスがたくさんあります。
地方公務員はどんな仕事?やりがいは?国家公務員との違いは?
ここでは地方公務員の概要、役割や責任、国家公務員との違いについて簡単に説明します。
まずは基本を抑え、「思ったのと違った」というミスマッチを防ぎましょう。
「概要は聞くまでもないかな」という方は次のパ-トまでスキップしてください。
>>『地方公務員に「向いている人」と「向いていない人」の特徴』
- このパートでわかること
- ・地方公務員の概要(仕事内容など)
・地方公務員と国家公務員の違い
・地方公務員が担う主な役割や責任
・地方公務員の給与や待遇
地方公務員の仕事内容
地方公務員は、都道府県や市町村などの地方自治体で勤務します。
地域に密着しながら、地域の福祉や教育、他にも健康保険など身近な住民生活に不可欠な仕事を行います。
公務員というと定型的な窓口業務をこなすイメージを持つ人も多いかもしれません。
実際には決まった仕事の方が少なく、道路などの土木工事、保育所整備など様々な分野において事業者や住民などの利害関係者、さらには同じ組織の人事や財政部局などとの調整に奔走する場面が多いです。
中には、「人と関わるのが苦手だから公務員になった」人がメンタルをやられて休職に至るケースもあります。
公務員時代に培った調整能力・経験を買われて、民間のコンサルタントに転職する人がいるくらいに調整業務は多いです。
また数年前から自治体が観光分野などで地域を盛り上げる地方創生の取り組みが行われており、地域の発展を目指して地域と合意形成を図りながら新しいものをつくりあげる仕事もあります。
そのためこれまでの公務員像とは異なるスキルや知識を求められることもあるため、中途採用者だけでなく新卒からずっと公務員をやってる人でも仕事によってはミスマッチが起こります。
地方公務員には、市民や地域住民の生活の基礎となる業務だけでなく、DX化など社会的に新しい取り組みにも対応していかなければいけません。
「公務員は、なってしまえばあとは楽」というイメージがあったけど、そうでもないんだね。
まぁ中にはそういうお荷物職員もいますが、普通に働く分には常に勉強や知識のアップデートなど自分磨きが必要ですね。
地方公務員の役割と責任
地方公務員は地域の福祉や安全を守る役割を担っています。
そのため行政の基本的なスタンスは保守的になりがちです。
保守的と言うと、頭が固く柔軟性に欠けるイメージもあるが、悪いことばかりではない。
「チャレンジ精神」や「トライ&エラー」を掲げるのもいいですが、生活に関する政策がコロコロと変わってしまうと、困ることになるのは住民です。
例えば、子どもの医療費負担額や学校給食の有無などが年によって変わるのはいかがでしょうか?非常に困りますよね。
住民が継続的に安心できる環境をつくることは大事なことです。
台風や地震、津波などの災害時や鳥インフルなど、緊急事態の際には組織全体で対応することになります。
新型コロナウイルスへの対応などは記憶に新しいと思います。
最近は特に、新型コロナウイルスや未曾有の自然災害など、これまで対峙したことがない新たな脅威に対して適切に判断・行動することが求められます。
そのためには、所管する分野における適切な知識や能力、そして判断力が必要です。
ゼネラリストが基本だった公務員(行政職)も、スペシャリストが必要とされる状況が増えているように感じます。
大変な仕事もありますが、地方公務員は地域社会に貢献することができ、やりがいにつながります。
一方で、責任やプレッシャーを感じることも多いため、ストレスへの対処法など自己管理を行うことも仕事の1つですね。
国家公務員との違い
地方公務員と国家公務員は、公務員という身分は同じですが、仕事の範囲が大きく異なります。
国家公務員は東京の霞が関にある中央省庁などで、国政に関する業務を広く担当しており、地方公務員は特定の都道府県や市区町村の中で、自治体の運営を行います。
転勤が嫌な人には地方公務員がおすすめ!
また国家公務員は全国の地方自治体に出向することが多く、民間以上に転勤がつきものです。
一方で、地方公務員も国や県内の市区町村への出向はありますが、基本的には採用された自治体内での配属となるため、転勤が嫌で特定の地域に住みたい人には地方公務員はおすすめです。
また給与面では、地方公務員は総合職の国家公務員より劣ります。
例えば、県庁に就職した人の中で課長になる人は早くて50歳前後ですが、国家公務員から県庁に出向する人は30歳前後で都道府県の課長を務めます。
もちろん若いうちから大きな責任を伴いますが、その分給料も高くなります。
地方公務員と国家公務員、どちらが良いかは個人の希望や適性によって異なります。
地域に貢献したいと感じる人は、地方公務員が向いているのではないでしょうか。
地方公務員に「向いている人」と「向いていない人」の特徴
ここでは、地方公務員に向いている人と向いていない人の特徴を紹介します。
誰にでも公務員になるチャンスはありますが、せっかく公務員になった後で「思っていたのと違う」とならないためにも、地方公務員に向いている人と向いていない人の特徴を確認してください。
地方公務員に向いている人は、公正な判断力や誠実さ、責任感がある人である一方、向いていない人は、ルールに縛られすぎて自分で判断できない人や、変化に対応できない人などが挙げられます。
地方公務員に向いている人の特徴
地方公務員に向いている人には以下のような特徴があります。
- 地方公務員に向いている人の特徴
- ①事務作業が素早くて正確
②論理的な思考ができる
③協調性・コミュニケーション力がある
①事務作業が素早くて正確
地方公務員は生活のベースとなる業務が多く、ミスが許されにくい面があります。
例えば、市区町村であれば税金の徴収や保育園の入所調整、戸籍や住所など住民窓口情報の取り扱い。
都道府県であれば税金の徴収や市区町村や民間企業等への補助金の交付など。
日常で行う業務内容は細かい作業が多いため、一つひとつの作業に正確かつ丁寧さが求められます。
②論理的な思考ができる
民間企業の中には、結果さえ出していれば多少のことには目をつむるという風潮もあるかもしれません。
一方で、公務員の業務は「結果がすべて」とはなりません。
どんなに良い事業であっても、そこに至るプロセスは理論の積み上げが必要です。
例え知事からトップダウンで「○○の事業をやるように」という指示があっても、担当として事業の必要性を世間に説明できるような理論構築のプロセスが必要です。
財布の紐を握る財政課にお金を要求する際にも「知事に言われた」という説明は通用しません。
そんなことを言ったら「小学生のおつかいか」と一蹴されます。
事業を実施するにあたり、現状や課題、実施することで得られる効果、コストパフォーマンスの適正さ、これらを考えるためには論理的な思考が必要になります。
③協調性・コミュニケーション能力がある
地方公務員には、協調性やコミュニケーション能力が欠かせません。
市役所であれば、市民との接点が多いため相手の立場に立ったコミュニケーションを取ることが必要です。
「私が市役所に勤務していた際は、窓口に来る住民を「お客さん」と呼んでいました。日々、色んな要望や苦情、相談に乗っており、コミュニケーション能力を試されるサービス業という感じでした。」
都道府県庁は、住民との接点は市区町村ほど多くはありませんが、組織の規模が大きく、市区町村よりも縦割り気質が強いため、住民よりも内部調整に苦労する場面が多くあります。
対立する部署の間に立ち、いかに物事をうまく進められるかが問われます。
住民に厳しい目を向けられるのはまだしも、内部の人に敵対視されるのは想像以上に辛いですし、面倒くさいです。
地方公務員に向いていない人の特徴
続いて、地方公務員に向いていない人の特徴を紹介します。
- 地方公務員に向いていない人の特徴
- ①自己中心的で自己顕示欲が高い
②考え方に柔軟性がない
③時代の変化に対応できない
では順番に説明します。
①自己中心的で自己顕示欲が高い人
いわゆる自分勝手で目立ちたがりの人です。
地方公務員の仕事は、住民生活をより良くするために黒子役として働くことが求められます。
個人の営業成績がモノを言う世界とは異なり、公務員は自分の行いが自治体の総意として見られるため、自分自身の利益や成果を優先するわけにはいきません。
「個人で活躍してよい評価をもらってバリバリ出世したい!」という人は、民間企業をおすすめします。
②柔軟性がない人
地方公務員は決まった仕事を淡々とこなすイメージをお持ちの人が多いかもしれませんが、実態は違います。
中にはそのような業務もありますが、定型的な事務は非正規雇用とされる人たちが担当するため、正規職員として採用された場合は決まったことだけを行う仕事はほとんどありません。
また行政として、住民といかに信頼関係の構築ができるかを問われたり、複雑化する行政ニーズに対応するために新しい考えを取り入れながら業務を進めたりしなければならず、決まったことをこなすだけでは仕事になりません。
柔軟性がなかったり、固定的な考え方にとらわれたりする人は、住民のニーズに対応しにくいです。
※数年前から非正規雇用職員は会計年度任用職員(正規職員)に改められていますが、実態はさほど変わっていないので一般的な非正規雇用という言い方をしています。
③変化に対応できない人
公務員として働いていると、仕事の仕方の変化や個人の価値観の多様化など、すごく時代の変化を感じます。
例えば10年くらい前であれば、「仕事ができる人=残業している人」という価値観が主流でした。
残業の文化はまだ残っていますが、それでもだいぶ改善されてきていると感じます。
またIT関係についても、DXの部署ができたり、自治体によっては全職員向けにDXに関する研修を実施しているところもあります。
そのため社会や経済、IT技術の変化に対応できない人は公務員になってからミスマッチを感じるかもしれません。
今後は特に、IT技術やデータ分析能力の需要が大きくなると予想されており、そうなると情報収集やデータ処理能力も持つ人材がますます必要とされることになります。
地方公務員であっても、時代の変化に対応することが求められます。
まとめ
これまで地方公務員に向いている人と向いていない人の特徴を紹介しました。
地方公務員に向いている人は、正確な事務作業と論理的な思考ができ、周りの人とうまく仕事を進められる人です。
さらに、柔軟な考え方ができて時代の変化に合わせて知識の習得などの姿勢を持っていればどんな分野でも間違いなく活躍できる人材になれます。
色々言っていますが、現役の公務員でも積極的に勉強している人は多くありません。中途採用でも努力できる人は先輩職員を追い抜くことができますよ!
地方公務員に向いている人の特徴
①細かい作業を正確かつ素早く行える
②理論的な思考ができ特徴
③協調性・コミュニケーション力がある
地方公務員に向いていない人の特徴
①自己中心的で自己顕示欲が高い
②考え方に柔軟性がない
③時代の変化に対応できない
ミスマッチを防ぐポイントは情報収集と自己分析
公務員試験は誰でも受けることができますが、それなりに勉強が必要です。
最近はせっかく頑張って公務員になったのに、思い描いた姿と違うことを理由に辞めてしまう人もいます。
客観的に見ていても、すごくもったいないと感じることがあります。
ミスマッチを防ぐポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ミスマッチを防ぐためのポイントは『情報収集と自己分析』
公務員にはどんな職種や仕事内容があるのかを知った上で、自己分析によって自分の特徴を把握することができれば、ミスマッチが起こりにくくなります。
公務員に関する情報収集の方法
地方公務員になったあとのミスマッチを防ぐためには、事前の情報収集が欠かせません。
当ブログは地方公務員を応援しています。
ですが、公務員には様々な職種があるため、よりよい選択を行うためにもぜひ知識としてどのような種類や仕事があるのかを知っておきましょう。
例えば国家公務員でも全国転勤がない一般職や、あまり知られていない国税専門官や裁判所事務官などもあります。
なお、社会人から公務員への転職をする人が概要を知るのに最適な「公務員への転職ハンドブック」というものがあります。
大手の資格試験スクール「クレアール」が出している無料の冊子であり、以下の記事で紹介していますのでご覧ください。
自己分析によって自分の強みや弱みを知る
公務員になってからのミスマッチを防ぐためには、情報収集とともに、自己分析が非常に重要です。
自己分析の手順を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 自己分析の手順
- ①自分の価値観を考える
②自分の強み・弱みを洗い出す
③公務員の仕事内容と自分の特性を照らし合わせる
④公務員になってからのキャリアパスを考える
公務員への転職を検討する理由は、今の職場が自分の求める価値観や環境にそぐわない部分があるからだと思います。
そこで、自身がどんな条件で仕事を進めたいのかを確認しましょう。
具体的には、働く時間や場所、何をやりがいに感じるのか、どのような人間関係を望むのかなど、自身が職場に求める条件を洗い出すことが重要です。
自身の実績を振り返りましょう。
そこから自分の強み・弱みを洗い出し、公務員として必要な能力やスキルを自分がどの程度持っているかを確認します。
公務員に必要な能力やスキルについては、先に説明した「公務員に向いている人の特徴」などを確認してください。
また少し盲点かもしれませんが、民間から転職される人は法律を読み解く経験が少なく、入ってから苦労するケースも少なくありませんので、注意が必要です。
地方公務員の仕事内容は様々です。防災、観光、環境、一次産業、土木交通、福祉・・・他にも様々な分野がありますので、どれかに興味があるのではないでしょうか。
また志望する自治体が何に力を入れているかによってもできることの特徴が変わります。
ITの知識・経験がある人であれば、DXに力を入れている自治体は特に活躍の幅が広がるかもしれません。大分市は自治体職員の多くに研修の機会を設けていたり、東京都は外部人材を受け入れてDX化を進めるなど、時代に先立つ分野は新しい取り組みに携われるチャンスも多いです。
他にも万博やオリンピックなど、その時々によって開催されるイベント業務も、貴重な経験ができて面白いと思います。
地方公務員の行政職は専門職に比べて様々な分野があります。
そのため退職するまで一度も経験したことがない部署があることも普通のことです。
異動の希望は叶わないことが多いですが、手上げ方式の異動など、前向きで積極的な姿勢を持つことで希望が通りやすくなっている傾向にあります。
キャリアパスを考えるにあたっては、「Will(やりたいこと)- Can(できること)- Must(やらなければならないこと)」を整理し、自分のこれまでと今後のキャリア像を描く方法が有効です。
さらに他の都道府県や民間企業、また国や海外に出向するチャンスもあり、地方公務員だからと言って1つの自治体しか経験できないわけではありません。
貴重な時間をつかって、最後までお付き合いくださりありがとうございました。